2005年11月23日

東京国際女子マラソン

ちょっと出遅れ気味ですが
(しょうがないいやん、
 ブログ書ける所に居なかったんだもん)
その分、力の入った記事を書きますね。

「社会的な意味」みたいな事は
本館に別に記事を書きましたので
ここでは、あくまで陸上オタクとして
分析分析を元に、語り尽くそうって感じで。
(なんで、基本的に敬称略で)

まず、一言でこのレースについて言うなら

高橋尚子が、
万全でない体調の中、慎重にレースを進めて
順当に勝ったレース

という感じだと思います。
あのスパートを驚いたって言う人が多いんですが
高橋ってランナーを思うなら
絶対、自分から仕掛けるって思ってました。
ただ足の不安があるから
「もう大丈夫」って思えるまで我慢して
さすがにもう大丈夫だろうって思ったのが
あそこだったって事で。
だから
35キロを過ぎてからは、
どこで仕掛けるかって目で私は見ていました。

と言っても
肉離れのある状態で、
フルマラソンを走りきるってだけでも
すでにとんでもないのに
勝負のかかったレースを行って
優勝争いを行い、
その上、きっちり勝った、というのは
やっぱり無茶苦茶に凄い事です。


###
高橋尚子が、どういうランナーなのか
というのを振り返っておきます。

高橋尚子というのは
最強のマラソンランナーです。
それは、マラソンのレースを自由自在に操る事ができる
だから
「速い」ランナーというより「強い」ランナーなんだ
って事です。
だって
初マラソンこそ平凡ですが、
2戦目で優勝してから、この前の東京マラソンで
失敗して2位(それでも2位)になるまで
ずっと優勝・1位を取り続けていた
という事でも
異次元の勝負強さを持っていた、というのが
分かるでしょう。


初優勝した98年名古屋国際女子マラソン
その衝撃は忘れられません。
本当に、とんでもない勝ち方だったんです。
30キロ過ぎで鮮烈なスパートをすると
その後、10キロロードレースのようなタイムで
最後まで走り切ってしまったんです。
そのレースのラップタイムを探したんですが
ネットには落ちてなかったんで
タイムでそのスパートの凄さを示す事が
できないんですが
多分、その当時に高橋選手が持っていた
10キロのタイムを上回るスピードで
30キロから40キロの10キロを走った
と記憶しています。
このレースで、当時の日本記録を更新したんですが
(その事については小出監督は
 「このタイムは誰でも出せるタイムだから」
 とさらっと言ってのけた)
そのレースはイライラするくらいのスローペースで
とてもじゃないけどタイムの出るペースじゃ
なかったんです。
最後の10キロあまりで、
そこから日本記録まで持っていった、という。
「さすがに記録は出ないけど強い勝ち方だなぁ」
と思っていたら、日本記録。
ホント、びっくりしました。

似たようなレースだったのが
2000年の名古屋国際女子マラソン
23キロ過ぎにスパートすると、
その後はもう異次元の走り。
この時の記録が、2時間22分19秒
中間点の記録が、1時間12分40秒
帰りのハーフが、1時間09分39秒
・・・つまり、帰りのハーフのタイムが、
ハーフマラソンの優勝タイム並みって事ですよ。
(同じ日に行われた
 全日本実業団ハーフの優勝タイムが
 1時間09分台前半だったと思います。)

高橋ってランナーは
スパートをすると
それまでのレースってのをリセットしてしまうような
そこから別のレースがスタートしたような
そういうレースをするんですよね。
それをマラソンの中でやってしまう、という
異次元のランナーなんです。

もちろん
最初から独走って走りもできるんですよね。
もっとも衝撃的だったのが、
98年のバンコクアジア大会。
灼熱のタイで、30度を越える気温と高湿度の中で
2時間21分47秒!
こんな条件で、このタイムなんて
今のラドクリフもヌデレバも走れないでしょう。

そういう「万能型」のランナ−が高橋尚子なんです。
(やってないのが「競技場まで争って勝つ」
 ってレースですね。
 もっとも女子で、そういうレースは少ないんだけど)

それだけじゃなくて。
高橋尚子が走っている所を見ているのは
ホント、楽しいんですよね。
普通、長距離レースって、
苦しそうに走ってるもんなんですが、
高橋は、躍動感とか生き生きしたものを感じるんです。
特に、
スパートした後の走りは、輝くように感じる。
高橋に人気があるのは、そういう部分も大きいって
私は思っています。


ベタ褒めしていますけど、
高橋尚子ってのは、それだけ「別次元」の存在
なんですよ。


そういう事を踏まえた上で
このレースを振り返ります。


最初に高橋の肉離れのニュースを聞いた時は
「また故障なのかぁ。つくづく付いてないな」
というのと
「今の時期に無理する必要はない。
 テレビ局の都合で強行出場しないで欲しい」
って気持ちでした。
直前まで、出ないで欲しいって。
なんで
レースが始まってからは、
怪我はどの程度か、大丈夫か、って目で
見ていました。

レースに出ていた他の選手としては
2年前に負けた、アレム。
まぁ、この選手は、常に安定して結果を出す人ですが
優勝経験が少ない事から分かるように
「怖さ」ってのはない選手。
2年前も「負けた」というより
高橋が勝手にブレーキしただけですからね。
それより、ザハロアの方が怖いかな。
世界陸上で渋井を退けて3位に入った選手。
持ちタイムも良いです。
日本人では、
この前のアジア大会ハーフで優勝した市川と
こちらも復活をかける松岡。
(一応、世界陸上日本代表ですが、
 そんなに強い選手という印象はないです。)

レースはペースメーカーが
足に不安のある高橋に気を使ったような
慎重なペースで始まります。
最初の5キロを17分フラット。
東京の最初の5キロは下り坂なんで
ホントならスピードが出るんですが
極力抑えたペース。

しかし、
日本人でこのペースに付くのは、市川のみ。
市川も、下りが終わってペースが少し上がると
すぐに落ちていってしまいました。
・・・マラソンじゃ、
まだその程度のランナーって事なのかなぁ。

そこから、25キロまでは
17分くらいのペースでペースメーカーがひっぱります。
そんなに速くはないけど、遅くもない、
くらいのペース。
(2時間23分台のペースですが、
 東京は最後に坂があるので、もう少し遅いくらいか。)
それでも、
有力選手が、少しずつ落ちていきます。
唯一、怖いと思っていたザハロアも
それまでに脱落していました。

高橋の走りは、
とにかく慎重に慎重に、足に負担をかけない
という走り方でした。
それ以外では、アレムも楽そうに走っていましたね。
(千葉が「高橋とアレムは口呼吸をしていない」
 と指摘していました。)

ペースメーカーが25キロでやめた時点で
先頭集団に居たのは
高橋、アレムに、
バルシュナイテというリトアニアのランナー。
結果から言えば、このランナーは
そこそこには仕上げてきていたみたいですね。
でも、一度遅れかけた事もあり
しかもこの時点で、結構しんどそうな走りでした。

こういう顔ぶれなんで
注目は、高橋がどこで仕掛けるか、だったんですが。
足の不安があるので、やっぱり無理しない様子。
ペースメーカーも居ないので
ペースも落ちてきました。

35.7キロくらい、勾配の大きい上りが始まる前に
高橋が満を持してスパート。
相変わらず切れ味の鋭いスパートで
あっという間に2人を引き離していきます。
もう足は大丈夫と判断してのスパートだろう
と思ったので
アクシデントがない限り、これで高橋が勝つだろう
とは思っていました。
案の定、後続との差は、どんどん開いていきます。
後続では、
バルシュナイテがスパートしてアレムを引き離し
懸命に高橋を追いますが
差はどんどん開いていきます。

だけど
やはり足に不安があるのか、
何度も何度も後ろを振り返る高橋。
(沿道から誰かが
 「もう後ろ開いたよ! 大丈夫だよ」
 と叫んでいました(笑))
沿道の声援が凄いです。
高橋もそれに応えて
それまでの走りと全く異なった
躍動感溢れる走りで、登り坂でもスピードが落ちません。
と言っても
思った程スピードは出てなかったようで。
35キロから40キロへの5キロが
17分9秒。
東京の登り坂でこのタイムというのは凄いそうですが
同コースでの高岡の激走を見ているので
本当に強いランナーならこの登りでも
そこそこでは走れると思います。
万全の高橋なら、17分は余裕で切るでしょう。
やっぱり、足に痛みがあったのと
向かい風が強かったそうですね。

ただ、
高橋が、高橋らしいレースで
ちゃんと高橋の良い所を出しての優勝
それを、足に不安のある中でやったってのは
素晴らしいし、やっぱり嬉しかったですね。
高橋としては「最低限」のレースだったとは
思うんですけども、
それでも、
あのスパートの躍動感、輝きってのを
見せてくれたのは、良かったです。


今日のコンディションでのレースでは
例えば、原あたりならあの程度のスパートなら
食らいつくでしょうし
他の強いランナーなら
先に仕掛けられていたでしょう。
だけど
肉離れのある状態で、これができるんですから
ちゃんと万全の状態が作れれば
今でも強いランナーだというのは証明したと
言えますね。


###
だけど
「やっぱりアテネに高橋を選ぶべきだった」
とか、今更言うのは
趣味ではありませんね。
私にとって、高橋は特別なランナーですけど
今更こんな事は言いたくないし
高橋自身も全く望んでいないでしょう。

もう良いじゃないですか。
「高橋はまだ終わっていない」
って事を
高橋自身が示してくれたんですから。
終わった事をごちゃごちゃ言うんじゃなく
これから、高橋がどんな挑戦を見せてくれるか
それを楽しみにしたいって思います。
posted by めたか at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 陸上 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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